「搬运」青桃 わたしの神様(3)
接上
第一章结束。
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正篇后还有个小甜饼(还很远
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『桃井さん、俺と付き合ってください』
サッカー部のキャプテンから呼び出された時に、用件は気配から察していた。それに桃井が困惑している気配を相手は感じていただろうが、それでも男らしく言い切り、相手は頭を下げた。
『ごめんなさい!』
桃井は相手よりも深く頭を下げる。
『今は、部活も忙しいし付き合うとか考えられなくて』
桃井は大抵、断るときにまずこの言葉を伝えている。ここで終わるケースが半分、校内の人間であれば残り半分が言葉を続ける。
『やっぱり、青峰?』
『違います』
相手があまりにも辛そうな顔をしていたため、この日桃井は少しだけ言葉を重ねてしまった。
『好きな人なら、別にいます』
すると相手は非常に驚いた顔をして、それから苦々しい顔を笑った。
『そっか。そいつ、羨ましいわ』
『上手く伝わらないんだけれど』
桃井は黒子とのことを思い浮かべて小さく笑う。
『…、色々上手くいかないもんだ。俺だったら、すごく嬉しいのに』
男は笑ったが、その顔は静かでどこか苦しそうだった。桃井はそれ以上何も言えず、ただ深く頭を下げる。目の前の相手が、とても良い人物だったことだけは分かっていた。
一度試しに誰かと付き合いなよ、と桃井に進言する人間も多い。だが、桃井は一度とも付き合ったことはなかった。
(そうだ)
桃井は静かに流れる授業の声の聞きながら、冷静に自分の中のものを整理する。
試合記録、勉強した内容。
会話。人。データ。
整理していく中で、桃井は己の中で、一つだけいつも残る大切なものを噛み締める。
(私のーー)
小学校高学年になるにつれ、色々とままならないことが増え、落ち込む機会も多くなった。そんな時、桃井は良く学校の図書館の隅に座っていた。それでも大抵、何故かそんな時に限って青峰に見つかる。見つからない時は、帰宅すると青峰が家で待っていたりする。
青峰の前で泣いたこともある。珍しくも、ぎこちない手で撫でられたことも、その胸を借りたこともある。うっせぇとか鬱陶しいと苦情を投げられこともあるし、同じ部屋で雑誌やテレビをただ観られていたこともある。
同じように、ベッドに突っ伏したままの青峰の部屋で雑誌を桃井が読むこともあったし、その膝や胸を貸したこともある。
気づけば授業は全て終わり、桃井の前には影があった。顔を上げれば、そこに立っている人物らはある意味予想の範囲内だった。
前回と同じメンバーが、桃井を囲むように立っていた。
正直今は相手にしていたくなどない。それでも、相手は逃すつもりなどないはずだ。
桃井はこの時点ですでに泣きたい気持ちになる。
「ちょっといい?」
「…うん」
桃井は小さく息を吸い、少しでも落ち着いて取り敢えず今をやり過ごすことを自分に課す。彼女らの後についていけば、目的地はどうやら屋上のようだ。
ホームルームも終わったばかりのこの時間、まだ校舎内はどこも人が溢れている。
全員が屋上にあがり、静かに扉が閉められる。それを合図にするように一人が口を開いた。
「ねぇ」
「本当にさ、どういうことか説明してくれない?」
昔から思っていたことだが、青峰と黄瀬のファンは過激派が多い。黄瀬のファンは抜け駆け禁止の精神から、青峰のファンは派手な美人が多くよりよい男を入手するために争うことを知っているタイプが非常に多い。
それはまさしく桃井がもっとも苦手なタイプでもある。
「一応ね、私たちもあなたの言うこと信じようとは思っているの。でも、さすがにやっぱり行き過ぎている。馬鹿にしているの?嘘ついているの?ねぇぇ本当にどういうつもりなわけ?」
「だから」
「ねぇ、ならさっさと誰か彼氏つくれば?サッカー部のキャプテン程度じゃ不満なわけ?それともそんなに男漁れる状況でいたいわけ?」
「あんたのせいで、青峰くんの評判下げるわよ」
呼び出された屋上で、どんと一人の人物の手が桃井の顔の横につく。そのままぐっと髪を引っ張られた。
この程度のことは平気だった。伊達に幼少期の肥満期間があったわけではない。
ただ、その瞬間先ほどの呆れたような、苛立った青峰の視線を思い出した。その瞬間、桃井の柔らかい部分が少しだけ揺れる。
「っ」
痛い、と声が出そうになったがそれをなんとか我慢し、相手をじっと見る。落ち着けと自分に言い聞かすが、僅かにシャットダウンが間に合わない。
「もうさ、本当に大人しくしていてよ」
分かって居るでしょう。
私たちが、あなたに何を望んでいるか分かった居るでしょう。
世界は、いつだって相手の望む通りのものにだけ優しいことを、私はもう知っている。
誰も同じ気持ちなのか、今にもエスカレートしそうな状況を止める者はいない。突然引っ張られた髪の痛みに、桃井は勝手に涙腺が緩みそうになる。
(思い出すな)
(飲まれるな)
ぎゅっと目を瞑り、強く自分に指示を出す。あの日、初めて突き飛ばされて泥だらけになった自分の手を引いて、廊下を歩いてくれた青峰。
彼がいなけらば、きっと自分はこんな時に泣くような人物に育つことはなかった。
(絶対、泣くな)
桃井は自分に強く命ずる。自分はいつも、肝心な時に力が足りない。昔は、我慢が出来ず泣くこともあった。なくと青峰が結局助けてくれることが多く、そしてまた悪循環になる。
だが、それはもう過去に断ち切った。
(そうだ)
ダン、とバスケットボールの弾ける音がする。
(だって、私はーー)
「おーおー、怖ぇな」
「あ、青峰くん!?」
一瞬にして女子数名の顔色が変わる。屋上に造られた小さな倉庫の更に上は昔青峰がさぼりに使っていたスポットだった。今居ること非常に珍しいが、どうやら今日はここで眠っていたらしい。
「お前、また告られてたのかよ」
「ま、またって」
「またはまただろ」
「またじゃないし!それを言うなら大ちゃんの方じゃない!さっさと彼女つくってよ馬鹿!」
「は?うっせーよブス。俺の話じゃねーだろうが」
「大ちゃんの!話です!」
今まさにこの目の前で展開されているのは、と桃井は力の限りさけぶが、突然のやり取りに一団はぽかんとし、それからきつい視線を桃井に向ける。
(はっ)
これもまずかったろうかと思うが、彼女を作れと叫んでいるのだ。それでも身の潔白にはならないのかと、桃井は絶望的な気分になる。
ただその中でも、青峰がいつも通りの青峰であったことに安堵している自分を強く感じる。
「で、それで終わりかよ」
その場に響く青峰の声。
青峰を好きな女子が、普通の女子と違う所は本人に見られたくらいで逃げ出さない所にある。彼女らは戦うことを知っている。
顔を上げれば彼女らは青峰に見られてからといって、戦意を失っているわけではない。
「さつき」
名前を呼ばれる。終わりにしたいという乙女心はきっと理解されない違いない。「青峰くん」と呼ぶことにすら、青峰に嫌悪を示す。面倒くせぇと言いながら、「桃井と呼んでくれ」という願いには決して頷かなかった。
青峰はいつだって、本能に従いやりたいようにやる。従わなかったのは、恐らくバスケのことくらいだ。
『それで終わりかよ』
青峰は確かにそう口にした。
桃井はその言葉を正確に理解し、静かに判断をくだして、薄く困ったような顔で笑う。その表情に、目の前の女子生徒たちは少しだけ気味悪そうな顔をする。
涙は完全に引っ込んでいた。
桃井は微笑む。
青峰が、桃井を促した。そして青峰は、目の前の集団に興味を示していない。そして現在までの品位のない行動。
自分が泣きたくなる必要など、欠片も無かったことを冷静に痛感する。
「ねぇ、知ってます?」
突然にこやかな笑顔になった桃井に、一人が露骨に顔をしかめる。
「あなたの元彼、今大変なことになってますよ」
「え」
恐らく予想もしていない言葉だったに違いない。
「先日二股がばれて、彼女に刺されたみたいで」
その言葉にさっと巻髪の女性の顔色が変わる。心当たりはあるようだった。
「かなり嫉妬深いタイプと今付き合っているみたいですね。ただ過去の写真、恐らくデータ全て保存しているみたいなので、気を付けた方がいいですよ。行き着けの場所、もしかしたらもとからとうさつできる仕掛けがあるのか、同じ場所でばっかり撮っていたみたいですけど」
桃井はそれから視線を動かす。
「あなたも、先日酷い振り方しているので今かなり恨まれて、真実かはわかりませんが彼の学校でかなり話されていますよ。ちょっとここでは言えないような内容ですが、投稿サイトにも気を付けた方がいいですね。あ、既にそれらしいもの数枚、掲載されているようなので、電車での視線には気を付けてくださいね」
「な、何を」
「秀徳でも話題みたいで、多分今あの学校のそばいけばきっとちょっとした有名人ですよ」
先日桃井が秀徳に出向いた理由の一つはこれにある。
秀徳という名前を出したことに顔色が変わったが、桃井は更にサービスで相手のフルネーム、身長まで伝え、更にもう一人前の彼氏の情報まで提供する。
普段であれば、あの緑間とあっていた日。決して青峰は桃井のことを追いかけてこなかっただろう。だがいつだって青峰の本能的な勘は鋭い。
部活動ではない、何か桃井の身に危険が及ぶ可能性があることを調査に行ったと、勘が告げていたのだろうか。
(そんなこと、絶対にないのに)
桃井だって馬鹿ではない。だから最初から秀徳の門では、まず緑間を探している体で話しかけていた。知り合いだとアピールをするために。その上で、誘導し必要な情報を聞きだしたに過ぎない。彼ら、彼女らの記憶には緑間を探していた女性として桃井は記憶に残っているはずだ。
「あ、あんた…」
桃井の情報に、ぞくりとした気持ち悪さを感じたのか一気に囲んでいた女性達は覇気がなくなる。青峰は全てを面倒そうに傍観しているのみだ。
桃井と緑間には共通点がある。
それはその体型のことだけではなく、二人とも神様を持っていることだ。
緑間はおは朝、桃井にとって神様はーー青峰大輝だ。
幼少期から、桃井の神様はいつだって青峰大輝だけなのだ。
(本当、馬鹿だなぁ)
彼女らが自分のことだけを馬鹿にしているのであれば良かった。
だが、青峰のことまで馬鹿にするのであれば話は変わる。自分のせいならばと反省はしていたが、むしろ彼女達の方が青峰の評判を落とすのに十分な存在だった。そして青峰は一切彼女に興味を示さなかった。
(それなら)
(これは、いらない)
桃井は強くするのは、ただ神様への心棒だ。
嘲笑う女子、どつき揶揄を繰り返す男子。それをいつでも庇ってくれたのは青峰だった。庇うというより有無を言わせないが近いのかもしれない。青峰の傍にいれば、桃井はいつでも静かな時間を楽しむことが出来た。
自分の出来ないことを楽しそうにこなし、もっとも望むものをくれる人を、世間では神様というのだと知ったのはいつの頃か。
絶対的な存在は、青峰が学校を休もうがいつだって桃井の心に、世界に安穏をくれていた。
桃井が痩せたきっかけも非常に简单だ。
『お前のせいで、青峰の評判まで落ちるんだよ。このデブ』
(そうか)
私が太っていると、迷惑がかかるのかと桃井はダイエットを始めた。そのための手段には、青峰が行っているロードワークについていくことを選んだ。この時期初めて、バスケットボールにも触れた。
今まで一切運動をしていなかったせいで最初は苦労したが、おかげで体重はみるみるうちに落ちて、周囲からの態度は一変した。
痩せた途端、周囲の男子どもは驚く程態度を変え、女子からの視線は意味が変わり、囁く声の強さも内容も何もかもが変わった。
その中で、いつだって変わらないのは青峰いとりだ。
いつだって。
どんな時だって。
水たまりに倒れ込んでも。
ドリブルが上手くできなくても。
桃井は笑って、それから顔面蒼白となった彼女らに一つの誠意を示す。
「あのね」
口を開くと、今や青ざめた女子生徒たちはビクリと肩を震わす。
「一生、絶対に付き合わないよ」
桃井は笑っていた。
「大ちゃんと私が、付き合うはずがないよ」
神様には、世界一幸せになってもらいたい。
そのために桃井はいつだって、とびっきりの相手を探している。
誰もが認めるような、可愛くて、優しく手凄い人。その人が来るまで、ただ隣を守っているに過ぎない。
(その相手に、私だけは絶対ない)
桃井は笑う。
桃井だけは、否、桃井こそが誰よりもよく知っている。
自分が悪い、嫌な奴だと知っている。
『バスケが好きな奴に悪い奴はいねぇ』
そういって黒子と仲良くしていた青峰。桃井は黒子のことがとても好きだった。青峰を元気にしてくれて、バスケットを非常に好きだと言う人物。
桃井は笑う。
(私は悪い奴)
誰も、今まで桃井に聞いたことが無い。
『バスケットを、好きですか?』
その答えは昔から決まっている。
『ーー大嫌い』
(バスケットボールなんて、大嫌い)
どんなに努力をしても、桃井はバスケットが嫌いだった。大嫌いで、でも自分の神様がすきなスポーツだから触れ合っているに過ぎない。
昔から、神様に嫌われる悪い奴だと、桃井はちゃんと知っている。
安心していいのに、と桃井は心底から思う。彼女らがもっと心根が綺麗で、神様を任せられる人物であれば、こんな面倒なことをしないでも隣の席が良いと言うのであれば、あっさりと譲ってたのだ。
青峰は、昔の青峰に戻りつつある。それであれば、自分にできることなどもう少なく、後は誰か任せられる人物が見つかれば良いのだ。
(大ちゃんの評判を落とすならと、友達も作ろうと思ったけれど)
どうやらこの分では、嫉妬にようる言いがかりだった可能性の方が高いと桃井は小さく安堵する。彼女達は気づけばその場から逃げ出していた。思ったよりもあっさりと居なくなってくれたおかげで、次の最悪の情報までは持ち出さずに済んだと桃井はその情報に蓋をする。
「…、というかなんで青峰くんここに居るの」
「天気がいいからな」
「部活!」
注意をしようと顔を上げれば、青峰は起き上がっていてじっと何故か桃井のことを見ていた。少しだけ難しそうな顔で。
「…青峰くん呼び、そんなにやだ?」
首を傾げて桃井は青峰の顔を見る。
「…、どうしたの?まさか調子悪?」
「気持ち悪い」
「え」
「お前のくんづけ」
桃井は苦笑いを浮かべる。昼休みのことを謝りたい衝動にも駆られたが、もう今さらな気もしたし、そんな細かいことをいちいち口に出すような間柄でも無い。
スタメンの件で怒鳴られた時も、和解は非常に曖昧だった。駅につけば、青峰は桃井を待っており、無言のまま家まで帰宅した。たったそだけのことだ。
「もー、いいからほら部活行くよ!」
「さつき」
耳に優しい声に、桃井は笑いながら応える。
昔の一番は父親だった。父親の呼ぶ『さつき』という声が、とても好きだった。
だが、いつから気が付けば青峰に呼ばれる名前が、桃井の一番になった。万華鏡のように、色々な楽しみ方が出来るその一言が、呼ばれる自分の名前がとても好きだった。
(ああ、いいなぁ)
桃井は笑う。もとに戻った青峰の声は、自分の耳にもとても優しい。
この声で、こうして名前を再び呼ばれることがどれだけ心地よいか、きっと青峰は一生知らない。
「何」
桃井の口から出る声は、甘い。いつだって、恐らく青峰に対して桃井の声は甘さを含む。崇拝する偶像を眺めるように、甘い声と視線で桃井はいつも青峰を捕える。
逃げて行った彼女達は、今頃どうしているのだろうか。
桃井の提供した情報に怯えているのか、それとも青峰の前で見せた醜態を、今更ながら後悔しているのだろうか。
好きな人によく思われたいという気持ちが、もし彼女達にあったのならば可愛いなと思う。
(やっぱり女の子は可愛くないとね)
黒子の前では、可愛い自分で居たい。
冷静で酷い自分ではなく、可愛らしさを持った女の子でいつだっていたかった。
バスケをすきになれなくても、黒子哲也であれば自分は好きになれた。バスケットが誰よりも好きな黒子の前でなら、可愛い女の子として好きで居ることができて、黒子はいつだってそれを許してくれていた。
(テツくんに、会いたいなぁ)
無性に思うのは何故のだろうと、桃井は良く分からないまま思う。
「さつき」
「もーだから何」
青峰が下りてきて、何故か頭に触にられた。青峰と接触することは珍しくない。
人前では別だが、そうではない所で青峰に触れたても桃井は別に拒否をすることはない。青峰から触れてくるのであれば、桃井はただ静かに享受する。
桃井はいつだって青峰が縋るのであれば、彼に彼女が居ない限りは何でもする。
(だって)
(青峰大輝は)
目を細めて、桃井は笑う。
『桃井さつきにとって、青峰大輝はたった一人のーー』
青峰は名前を呼んだまま、口を開かなかった。言いよどむような口調と表情がどこか不思議で見つめていたが、暫くしてからそれがまるで迷子の子供のようだと想い、桃井は思わず笑う。桃井こそが子どものように笑えば、青峰はやはり少しだけ眉を寄せるような顔でただじっと桃井のことを見つめていた。
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这都能有敏感词,幸好汉字都能变成假名,太有毒了吧